久良大作(大工塾1期生)_久良工務店

1966年 広島県生まれ
1990年 石油化学会社に就職
1994年 同退社、東京都町田市で一人親方のもとに大工弟子入り、同時に夜間の大学建築学科に通う
2000年 独立、山口県岩国市で開業

 

 

彼は脱サラ大工だ。会社を辞める時、木に触れる仕事をしたいと言っていたような気がするが、まさか原木市場に出向いて丸太を競り落とすところから関わることになるとは思っていなかった。それでも嬉々として出かけて、こんな木があった、こんなすごいのがあったと話すのを見ていると、まあ楽しそうだからいいのかなと思う。そうやって競り落とした原木は、いわゆる彼のとっておきの材になって、それを梁や柱に使う時はとても満足げで微笑ましい。しかし、丸太が梁や柱になるまでには、製材→皮剥ぎ→自然乾燥→木ごしらえと相当な時間がかかり、また材木を保管しておく場所も必要になる。気の長い話だし、仕事も来てないうちに仕入れるわけだから、こんなに買って大丈夫かな、と思うこともある。けれど、彼が言うには「出会いは一期一会で、これと思った木は買っておかないともう二度と会えない」のだそうだ。それはわかる気がするけれど。とにかく、そうやって選んだ材木を木ごしらえして墨付けをし、刻んだ材料で行う棟上げは私でも緊張してドキドキする。彼も棟上げが近づくと寝ていても仕事が気になって、まだ暗いうちから目が覚めてしまうようだ。

今はプレカットを使うのが主流だそうだが、プレカットだと棟上げの時でもそんなにドキドキしないだろうし、眠れなくなることもそれほどないだろう。工期も圧倒的に早いし収入もいくらか安定するかもしれない。けれども、どうやらうちの大工は本当に木が好きらしく、いくら時間がかかってもいくら場所代がかかっても、この仕事のやり方をかえようとしない。

「大工になる」と言われた時から安定した収入を望むことはあきらめているし、いよいよ苦しくなったら私も資格を活かして他に仕事をみつけるよ、というぐらいの気持ちではいるけれど、一方で、最近大きな仕事はないけれど今日も一日無事終わったし食べていけてるからまあいいか、と呑気にしているところもある。せっかく脱サラしてまで選んだ仕事なんだから、とことんやりたいようにすればいいし納得のいく仕事をしてほしいと思う。

地方の田舎に住んでいるから可能な仕事のやり方かもしれないけれど、好きなことを好きなようにやれるのは本当にうらやましいことだなと思う。